そのころ、東京中の町という町、
スマホ縦家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、
スマホ縦スマホ縦怪人「二十面相」のうわさをしていました。
タブレット横「二十面相」というのは、
スマホ縦毎日毎日、新聞記事をにぎわしている、ふしぎな盗賊のあだ名です。スマホ横:
スマホ横その賊は二十のまったくちがった顔を持っているといわれていました。つまり、変装がとびきりじょうずなのです。どんなに明るい場所で、どんなに近よってながめても、少しも変装とはわからない、まるでちがった人に見えるのだそうです。老人にも若者にも、富豪にも乞食にも、学者にも無頼漢にも、いや、女にさえも、まったくその人になりきってしまうことができるといいます。
タブレット横 では、その賊のほんとうの年はいくつで、どんな顔をしているのかというと、それは、だれひとり見たことがありません。
タブレット縦 二十種もの顔を持っているけれど、そのうちの、スマホ横:
スマホ横どれがほんとうの顔なのだか、だれも知らない。いや、賊自身でも、ほんとうの顔をわすれてしまっているのかもしれません。それほど、たえずちがった顔、ちがった姿で、人の前にあらわれるのです。そういう変装の天才みたいな賊だものですから、
スマホ縦警察でもこまってしまいました。いったい、どの顔を目あてに捜索したらいいのか、まるで見当がつかないからです。
タブレット縦 ただ、せめてものしあわせは、この盗賊は、宝石だとか、美術品だとか、美しくてめずらしくて、ひじょうに高価な品物をぬすむばかりで、現金にはあまり興味を持たないようですし、それに、人を傷つけたり殺したりする、ざんこくなふるまいは、一度もしたことがありません。
タブレット横 血がきらいなのです。しかし、いくら血がきらいだからといって、悪いことをするやつのことですから、自分の身があぶないとなれば、
タブレット横 それをのがれるためには、何をするかわかったものではありません。東京中の人が「二十面相」のうわさばかりしているというのも、じつは、こわくてし
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